込江保次税理士事務所■横浜市栄区・鎌倉市大船

2006年4月19日(水) 12:05

シリーズ新会社法□LLCとLLP

会社法ではこれまで説明をしてきました株式会社と言う組織形態以外に、新たに合同会社(LLC:Limited Liability Company)と有限責任事業組合(LLP:Limited Liability Partnership)が創設されます。

LLCは、米国LLCを参考として作られたものですけれども、日本版は「法人格」を持つ組織であるために法人税課税が行われることが特徴です。それに対しましてLLPは「組合」であるために法人税課税はされずパススルー課税と呼ばれる組合構成員課税となります。
組合構成員課税とは、組織で得た利益をその契約による割合に応じて各構成員に分配し、各構成員はそれぞれ所得税の確定申告を行うことになります。ですからLLPとして損失が生じた場合には、その構成員に給与所得などがあるならばその所得と通算(合算)をしますのでこの場合には所得税額が抑えられることになります。

利益の分配に関しましては、株式会社ではその出資の割合に応じて分配されるのに対して、LLC及びLLPでは共に出資の割合とは関係なく出資者間で自由に決めることができる点も特徴です。

このように似た特徴を有するLLCとLLPですけれども、LLCは合同会社ですのでこの会社法に規定されている組織ですが、LLPは会社ではなくて法人格を持たない組合であるために正しくは昨年5月6日に施行されました有限責任事業組合契約に関する法律により規定されておりますのでご注意ください。

これらも含めまして、LLC(合同会社)とLLP(有限責任事業組合)の主な特徴などを表にまとめてみます。
  LLC(合同会社) LLP(有限責任事業組合)
法人格 あり なし
出資者の責任範囲 有限責任 有限責任
業務執行機関 各社員。社員が複数ある場合は社員の過半数又は業務執行委員 各組合員。重要な財産の処分、譲り受け、多額の借財については組合員の同意
利益処分割合 定款規定により自由 組合契約により自由
出資者が1人となった場合 存続可能 存続不可能
組織変更 他の種類の会社への組織変更可能 会社への組織変更は不可能
組織再編 株式会社との間で合併等の組織再編行為が可能 組織再編行為は不可能
課税方法 合同会社に対して法人税課税 組合員に対して課税
ただし、組合で生じた損失の組合員への取り込みに一定の制限あり


結局のところLLCとLLPのどちらかを設立したいという場合に、その判断となるのは「法人格」の有無ではないでしょうか。
即ち組織として事務所を借りたり、お金を借りたり、契約をしたりする必要がある場合には、やはり「法人格」があることは契約をする上で必要になることが多いと思いますし便利でもありますので、そのような時にはLLC(合同会社)が有利でしょうし、労働力やノウハウなどの知的財産を集めて何かを行うような時は登記や決算などの負担が無いLLP(有限責任事業組合)が有利なのではないかと思います。

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